日本人の死因トップは悪性新生物(がん)ですが、部位別に見ると大腸がんは女性で1位、男性で3位になります(2015年)。

いつも言われているのが、食の欧米化に塩分の取りすぎ・飲酒・喫煙などが原因、というものですね。

さらに大腸がんの部位別では、62.5%がS状結腸から肛門までの間で発生しています。

神奈川県立がんセンター大腸外科では、直腸がん手術が全体の42%を占めていたそうです(2012〜2013年)。

 

 

ここで思うのが、食の欧米化というくらいですから、欧米では大腸がんは多いのかな、ということです。

そこで調べてみると、アメリカでは全人種での10万人対比で、1992年では約60人だったのに対し、2012年のデータでは48.9人になっているとのこと。

ん?アメリカでは大腸がんは減っているの?

日本人の10万人対比を見てみると1975年で約25人だったのに対し、2000年の時点で69.5人になっているそうです。

厚生労働省のデータでは、大腸がん死亡数の増加は2006年以降緩やかになっていますが、それまでは右肩上がりで、1970年と2010年を比較すると、総数では4倍超の増加となっています。

えっと、、、食の欧米化が大腸がんの原因、、、じゃないの?

とまぁ、以前にも当院では投稿していますが、統計学は見る角度を変えると途端に違った結果が見えてしまいます。

また、原因1つ:結果1つの1:1の比較法は、他の要素を排除してしまう点で非常に怪しく危険なものになってしまいます。

結果は1つでも、そこに至る原因は複数ある、と考えるのが正しいでしょう。

 

 

ここで一つ、面白い情報をご紹介します。

それはなんと、ウォシュレットと大腸がんの因果関係というものですΣ(・□・;)

ウォシュレットは1980年発売以降、日本では既に設置されていない家の方が少ないくらい当たり前の製品になっていますが(ちなみに「ウォシュレット」はTOTOの商標)、なんと販売35年で4,000万台(TOTO製品のみ)を売り上げているのだとか。

それで、ウォシュレットの普及と大腸がんの増加に因果関係があるのではないか、と考える人がいるのです。

ちなみに、先ほどの1970年〜2010年の大腸がん死亡総数がおよそ4倍(正確には4.26倍)という話をさらに細かく、各年代と2010年の死亡総数を比較すると以下の通りになります。

対1970年比  4.26倍

対1975年比  3.39倍(-0.87)

対1980年比  2.75倍(-0.64)  ←ウォシュレット販売開始年

対1985年比  2.21倍(-0.54)

対1990年比  1.74倍(-0.47)

対1995年比  1.38倍(-0.36)

対2000年比  1.22倍(-0.16)

対2005年比  1.08倍(-0.14)

ん〜、これだけ見ると本当に因果関係があるのかは分からないですね。

むしろ、これだけを原因と考えるのには無理があるようにも思えます。

ただ、以前の生活習慣とは異なる習慣が入り込んできたことには間違いがないため、

「お尻の常在菌を洗い落としてしまう」

「浣腸刺激と同じで依存性がある」

という話には耳を傾ける価値があるかも知れません。

 

 

実際、皆さんの生活からウォシュレットを取り去ってください、と言われた時、どんな気持ちになりますか?

私は前職が不動産仲介業だったので、物件案内の際にウォシュレットが付いていない物件を案内すると、「ウォシュレット付いてないじゃん、こんなのありえない」という方もいました。

新築やリフォームの際、ウォシュレットは必須改修項目でしたし、ウォシュレットって日本の文化にここまで入り込んでいるんだな、と実感したものです。

これって歴とした依存症の症状です。

ウォシュレット使わない人を公言すると、「汚い人」みたいなレッテルを貼られます(ちなみに私は使わないのですが)。

使わない人間から言わせてもらうと、ウォシュレットが無いと生きられないレベルの人はタバコ依存症と大差ありません

この類の人は衛生観念が過剰であり、外国、特に東南アジアなどの発展途上国では生きていけない人です。

そういう意味で、ウォシュレット依存症は歴として存在します。

また、前述の常在菌を洗い落としてしまう、というのは程度こそあれ物理的は確かなことですね、ウォシュレットはそもそも洗い流すものですから。

浣腸刺激と同じで依存性がある、という記述も見たりしますが、ここまでくるとまぁ信じる信じない半々というところでしょうか。

総合すると、ウォシュレット依存症は確かに存在し、その類の人たちはお尻を洗いすぎるのもまた事実です。

そして洗い流されるのが全て便だけということは有り得ず、少なからず常在菌が洗い落とされます。

それが肛門・直腸や水圧の強い人であればS状結腸部まで洗い流す人も考えられることで、これがS状結腸〜肛門までの大腸がんが多い理由の「1つ」であることは、合理的に考え得ることです。

 

 

最後になりますが、前述の通り原因と結果は1:1で比較しては危険です。

ですので、このウォシュレット問題もあくまで可能性の1つとして捉える必要があり、これが全てではありません。

ただ、普段私たちが考え得ない発想だと思い、今回取り上げてみました。

また、アメリカでは大腸がんの死亡数が減っているという内容は、食の欧米化原因説を唱える人たちにとって不都合なデータだからか、目にする機会はまずありません。

そういった意味でも、言われたことをそのまま鵜呑みにするのは危険です、まずは自分で裏付けを取りましょう。



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